・この記事で解決できること
・オフショア開発とは何かが理解できる
・オフショア開発のメリット、デメリットについて理解できる
・オフショア開発の現状と将来について理解できる
当記事では、オフショア開発の概要についてご説明します。この記事だけでオフショア開発とは何か、メリット・デメリット、そしてオフショア開発の現状と将来についてまでの概要が理解できます。
今後オフショア開発の具体的なことがらについて、いろいろな記事を書きたいと考えています。まずはオフショア開発の概要をご理解いただければ幸いです。
オフショア開発とは何か
オフショア開発とは
オフショア開発(offshore development)とは、ソフトウェア開発業務の一部を海外の子会社や海外の開発会社などを通じて行われる委託開発の一種です。
例えば、企業の基幹システム開発、Webシステム開発、スマートフォンのアプリケーション開発などの実装フェーズを中心に行う場合が多いです。
オフショア開発に対して、日本国内の人件費が安い地域で開発することを「ニアショア開発」と呼びます。
北海道や沖縄が典型的で、セキュリティの観点から海外では開発できない場合やコミュニケーション重視の開発などで採用される場合が多いです。
オフショア開発進展の背景
オフショア開発進展の背景には、IT人材が不足する日本の現状があります。
この人材不足は、2030年に40万人以上の規模になると見られており、対策が急務になっています。
グローバリズムの進展に伴い国内での人材供給を高めるだけでなく、海外からIT人材を調達する動きが強まっています。
オフショア開発先(国)とは
オフショア開発は1980年代に中国から始まりました。
その後、中国の人件費高騰やカントリーリスク対策のため、周辺国のベトナム、フィリピン、そして技術力の高いインドなどに広がり、現在はインドネシア、ミャンマー、バングラディシュなどに広がっています。
オフショア開発の目的
オフショア開発の目的はズバリ「コスト削減」です。日本に比べ圧倒的に安い人件費のメリットを享受するため海外要員を使います。
これは日本に限ったことではなく、まず欧米から始まったグローバリズムの一環といえるでしょう。
コスト削減の目的から始まったオフショア開発ですが、最近では「技術者不足への対応」という面も見逃せません。
日本のIT技術者不足を海外のエンジニアで補うということも一般的になっています。
オフショア開発の仕組みとは
製造工程が中心
日本からのオフショア開発は、プログラミングやテストの下流工程が主流です。場合によっては詳細設計(内部設計)をオフショアで行うことはあります。
製造工程が中心なのは、日本語の問題で設計作業が現地で行うことが難しいこと、業務自体に日本の特殊性が内包していて海外での作業が難しい、などからです。
ブリッジSEの存在
日本語を理解する海外エンジニアが少ないことから、ブリッジSEという開発の橋渡し役を置くことが多くなっています。これは日本企業のオフショア開発の特徴と言われています。
・日本側から提示された仕様書の翻訳
・現地エンジニアへの説明
・仕様の調整や日程調整
などを行うことが多いです。
ブリッジSEは日本人であることが一般的で、現地に駐在するか、日本にいてリモートで作業をする場合があります。
最近では、現地エンジニアに日本語教育や日本の開発方法論の教育を行い、ブリッジSEとしての役割を持たせる会社もでてきています。
逆に、最近のベンチャー企業などでは、英語の堪能なエンジニアも多くなり、ブリッジSEをわざわざ置かない場合もあります。特に機械翻訳の飛躍的な向上と、チャットレベルでのコミュニケーションができれば開発は可能となるので、言語のバリアは低くなる傾向があります。
今後は、通訳ソフトの性能向上などで、日本とのダイレクト開発の傾向は強まるものと予想されます。
クラウド開発やリモートワークの普及が後押し
最近主流になってきたクラウド開発やリモートワークの普及がオフショア開発を後押ししています。
クラウド開発であれば、インターネットに繋がっていれば開発場所は問題になりません。また、リモートワークの普及で、リモート開発の抵抗が少なくなりました。
これらの要因により、以前にもましてオフショア開発の可能性・有用性が高まっています。
オフショア開発のメリット、デメリット
オフショア開発には大きなメリットがありますが、当然デメリットもあります。どのようにメリットを生かしてデメリットを抑え込むかが、オフショア開発の醍醐味です。
オフショア開発のメリット
・コスト削減
オフショア開発の最大のメリットはコスト削減効果になります。
近年の日本はコスト削減優先社会になってしまって、給料は上がらないわ、物価は下がるわ、でデフレ状況が続いています。
このような状況は開発費用にも及びます。案件の値段は相対的に低下し、それに呼応してシステム開発を安く行う必要が増しました。そのための切り札がオフショア開発です。
筆者が初めてオフショア開発を行った20年前頃は、オフショア先の人件費が非常に安く圧倒的な費用低減効果がありましたが、最近はその効果も少なくなりつつあります。
・技術者不足の解消
最近のオフショア開発では、コスト削減に加えて、技術者不足の解消ということが大きな目的になりつつあります。
ちまたで言われている通り、ソフトウェア開発のエンジニア不足は深刻で、また開発技術の変遷で日本の一部のエンジニアの中でスキルアンマッチが発生しています。そのため、必要となる最新スキルの技術者を獲得するため、オフショア開発を採用することも珍しくなくなりました。
・納期短縮(場合による)
単純な開発作業であれば、大量のエンジニアを投入して短納期を実現することも可能です。
たとえば、Webの画面だけ大量に作成や修正が必要になった場合など、作業手順さえ明確にすれば一気に短期間で仕上げることが可能になります。
複雑なプログラムはこれができません。逆に大混乱になる場合が多いです。くれぐれも適用分野を間違えないようにしましょう。
・ソフトウェア開発のグローバル化
オフショア開発を行うことで、ソフトウェア開発のグローバル化を推進することができます。
たとえば、開発する製品の英語化や、海外のニーズに合った製品を開発することも可能です。また、英語圏で先行する最新技術に対応することも容易であり、従来日本企業が不得意であったグローバル化を推進することが可能になります。
オフショア開発のデメリット
オフショア開発のデメリットは端的に言えば、「開発が失敗するリスクが増大する」ということです。
主要な要因は以下の3点です。
・工数の増大
オフショア開発では工数が予想以上にかかってしまうことがあります。
根本的な原因はコミュニケーションの困難性にあります。
ブリッジSEは置くものの、開発エンジニアとのコミュニケーションに多くの時間を要したり、仕様理解の勘違いより手戻りが発生することはよくあることです。
また、品質に問題が出てくると、より多くの会議やレビューが必要となったりして悪循環に陥り、工数が飛躍的に増大することになります。
・進捗管理や品質確保の課題
仕様の理解不足という面もあるのですが、文化的な問題で、進捗や品質のとらえ方が日本側と異なり、正確に進捗や品質をとらえることが困難になる場合があります。
何も言わなければ、現地のエンジニアたちは、だいたいできていれば完成と報告しがちです。
しかし、実際テストしたら、必要な機能が実装されていなかったり、当たり前のエラー処理が抜けていたりなど良くある話です。
完了基準を明確にするとともに、日本側できちんとレビューをしていく必要があります。
・開発期間(スピード)の問題
開発スピードが求められる案件の場合、オフショア開発が適さない場合があります。
例えば、新しい商品をごく短期間に開発しなければならない場合など、ユーザーと一体となって開発する場合があります。
この場合は仕様書はなかったり最低限になるので、オフショア側を巻き込むことは困難になります。ただ、海外要員を日本の現場に投入して開発に従事してもらう、といことはよくあることです。
オフショア開発の将来
日本のオフショア開発は既に30年以上の実績がありますが、今後については課題も多くなっています。今後のオフショア開発の方向性を見てみます。
現行のオフショア開発モデルの終焉
最近のグローバル状況の変化や日本人自体の国際化などから、従来のオフショア開発方法の限界も見えてきています。今後の方向性を見直す時期に来ています。
・イナゴ型ビジネスの終焉
オフショア開発は、イナゴが農場を次々と食い尽くすように、これまでは安い賃金を求めてオフショア先を変えてきましたが、これも限界になりつつあります。
200x年代 ベトナム・フィリピン
201x年代 ミャンマー、インドネシア、バングラディシュ、マケドニア
・日本語依存からの脱却
オフショア先に日本語を押し付けるというビジネス・スタイルを止め、日本人が英語でコミュニケーションをする方向へシフトしつつあります。 今後人口減少から衰退する日本を考えればクライアントも含めて英語でグローバル化を目指すことが成長につながると思われます。
・優秀な人材確保の必要性と人材の減少
オフショア開発拠点ががASEANの優秀な人材の確保先となります。オフショア人材を単なる下請け人材としてではなく、本業ビジネスを牽引する戦力化していくことが考えられます。
日本側がアジアの優秀な人材を受け入れられる体制を作れるかがカギになるでしょう。移民問題や法的な観点から、リモートで社員と同じような働きが出来る方向に向かう可能性があります。
また、今までオフショア先としてきた各国とも人口増加率は低下傾向であり、今後人材が枯渇してくる可能性があります。そうなると、従来のような「安価な人材」を求めてオフショア会社を設立して行うビジネスモデル自体が成り立たなくなる可能性があります。
・現地でのビジネス開拓
オフショア進出先の大半は人口が多い地域です。オフショア拠点を現地を含めたニュービジネスの開拓拠点としていくことが求められます。
現に、Grab(配車アプリ)を始め、いくつかの有力な企業が育ちつつあります。
オフショア開発モデルの今後とは?
今まで見てきたように、従来のようなオフショア開発モデルが近い将来成り立たなく可能性があります。
これに代わって出てくるのは、グローバルのスキルマーケットではないかと考えられます。
つまり将来的には、開発プロジェクト毎に必要なスキル要員をグローバルのスキルマーケットで調達してプロジェクト・チームを組成し、開発プロジェクトを遂行していく方向にむかうのではないでしょうか。
この背景には、オフショア開発業界の外的要因(オフショア先の枯渇)とIT関連のテクノロジーの変化という両面があると思われます。つまり、以下のような理由からです。
・オフショア国の優秀なエンジニアの気づきと流動化(高単価な仕事への流入)
・リモート・ワークの進展(国内外でのリモート協業の抵抗感減少)
・日本人の国際化(英語を含むコミュニケーション能力の向上)
・中・小規模案件の飛躍的増大(ユーザー直接案件の増大)
・ITスキルのオープン化・標準化(オープン化・標準化による協業の容易性向上)
・グローバル・スキルマーケット創設の可能性(今後は不明)
もちろん、全てがグローバル・スキルマーケットになるわけではなく、徐々に2極化していくのではないかと考えられます。
→ 高単価の自社エンジニアで開発(外人含む)
2.コモディティ的なIT開発(決まったパターンや技術を利用)
→ グローバル・スキルマーケットで都度調達
当面は現在のオフショア開発スキームも残るでしょうが、いずれ今のグローバル間の搾取的な構造は薄れていく方向にならざるを得ないと思います。その風穴を開けていくのが、グローバル・スキルマーケットになると考えられます。
そして、二極化していく過程の中で、”海外エンジニアを有期での直接雇用”という形態がでてくると思います。大きなスキルマーケットが無い以上、個別に調達しようという動きです。
実際、個別にITエンジニアのグローバル調達をしているところも散見されます。社員という形ではなく「有期の業務委託契約」という形で必要スキルを充足していくのは、雇用側には非常に楽です。今後この動きが進んでいくのではないでしょうか。
小職も以下のサービスをご提供していますので、興味があれば当ブログの”お問合せ”からご連絡いただければ幸いです。
まとめ
さて皆さん、いかがでしたか?
「【基本です!】オフショア開発とは何か?」をご紹介しました。オフショア開発を理解する上での参考になりましたでしょうか。
オフショア開発は、ソフトウェア開発においては既に特別なことではありません。リモートワークが一般的になった現在では、当たり前のこととして、通常の業務に組み込まれるようになりつつあります。
グローバル化が進み、自動翻訳ももうすぐ実用段階になる現在、開発チームにオフショア先のエンジニアがいるのは当たり前のことです。
今までは単にコストを抑えるためでしたが、これからはいかにオフショアエンジニアを含めて開発チームを効果的に運営していくか、次のステージの考え方が求められていると言えます。
そして将来的には、グローバルのスキルマーケットが整備され、各国のエンジニアが自由にリモートワークで協業していく世界がやって来るのではないでしょうか。
では、明るく、楽しく、前向きに、毎日をお過ごしください。
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