定年後はこれで決まり?超保守的、年金の繰り下げ受給という選択

eyecatch-37 お金・年金

・お悩み

来年65歳の完全定年なのだが、年金だけでは生活費が賄えそうもないので、これからの生活が不安だ。
貯金自体はまあまああるのだが、たぶん少しずつ貯金を取り崩していくことになると思う。いつまで貯金が持つのかとても心配で夜も眠れないほどだ。

お悩みはごもっともです。
預金通帳がどんどん減るのを見ながら生活するのは心臓に悪いですよね。かといって、虎の子の銀行預金を今更リスク資産に投資するのも危険ですね。
実は、年金の繰り下げという決定的に安全な選択肢があるんです。今日はそれをご紹介したいと思います。

年金繰り下げ受給とは?

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メディアでも頻繁に取り上げられていますのでご存じかもしれませんが、簡単にご説明します。

年金繰り下げ受給とは、老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金の両方)を65歳で請求せず、66歳以降70歳までの間に繰下げて請求するものです。 繰下げ受給の請求をした時点に応じて、最大で42%年金額が増額されます。
※既に受給している人はできません。ただ、既に厚生年金を受給しているが、老齢基礎年金未受給の人は、老齢基礎年金だけの繰り下げは可能(現在の65歳移行期間対象者のみ)。

つまり、65歳で年金の受給を受けず、自己資金だけで生活していくということです。
受給できる年金は増えますが、受給開始までの生活費をどうするかという問題がでます。ここがクリアできれば、実は素晴らしい制度なんです。
長生きリスクを考えずに生活できるのは素晴らしいですね。

(ご参考)
【外部リンク】日本年金機構|年金の繰り上げ・繰下げ受給 はこちら

年金繰り下げのメリット・デメリット

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最初にひとことだけ。
年金の繰り上げ、繰り下げ問題で、「何歳まで生きないと損だ、得だ」という議論はナンセンスです。メディアが勝手に煽っているだけです。実際に年金を受け取る私たちにとっては、どうしたらよい生活ができるか、ということだけです。死んだ後に損得なんかないですから。
メディアの煽り記事に浮足立たないよう、しっかり考えていきましょう。

それでは具体的に、年金の繰り下げ受給について、そのメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。

メリット

年金の繰り下げ受給のメリットは、繰り下げ期間に応じて受給できる年金額が増える、という1点です。
具体的には、1ヵ月繰り下げると0.7%受給額が増えます。70歳までの60ヵ月で最大、42.0%の増額となります。

【繰り下げ増額率の例】
請求時の年齢  増額率
66歳0ヵ月    8.4%
67歳0ヵ月   16.8%
68歳0ヵ月   25.2%
69歳0ヵ月   33.6%
70歳0ヵ月   42.0%

デメリット

メリットは基本的に1つなんですが、デメリットはいくつかありあます。しっかり確認しましょう。

①税金・保険料などが増加する

年金額が増えると、税金や社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)も増えるため、手取りベースでみると額面と同じ率では増えないということです。
例えば、65歳から受け取る年金が230万円の人が5年間繰り下げると、70歳からの年金額は42%アップの約326万円となります。ところが、手取りベースでは36%アップの約313万円にとどまります。

②加給年金は繰り下げできない

妻が年下の場合、老齢基礎年金の受給開始から妻が65歳になるまで年間39万円(特別加算後)の「加給年金」なるものが貰えます。しかし、年金の繰り下げをした場合、加給年金の受給要件も繰り下がる訳ではありません。
つまり、当初要件の期間内で繰り下げれば、要件の残りの期間の「加給年金」だけしか貰えない、ということになります。

③遺族厚生年金は65歳時点の年金額で計算される

死んだ後の話をしても仕方ないのですが、残された奥さんのことを考えるのも重要だと思います。気を付けたいのは、「遺族厚生年金は65歳の年金で計算される」ということです。死んだ後まで増額するわけではない、ということです。
奥さんが生活に困らないように配慮しておくことも重要ですね。
考え方によっては、繰り下げしないで、その差額をできるだけ運用しておくということも選択肢の一つかも知れません。

④将来のインフレや日本の年金システムへの懸念

日本の年金システムが崩壊するとは思いませんが、将来のインフレに給付額もスライドしてくれるのか、また、年金財政の悪化で給付額の減額とかないか、など若干の懸念があります。

実際のケースでの検討

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それでは、実際のサンプルケースで検討してみます。

2019年における、高齢夫婦無職世帯の家計収支は以下のとおり。
収入のうち、社会保障給付(年金)額は、216,910円(約22万円)。マスコミなどはこの支出額と年金額の差額、つまり54,018円が不足する、と騒いでいます。

●計算例

収入:
実収入 237,659円(年金外あり)
不足分  33,269円
(合計) 270,928円
支出:
消 費 239,947円
非消費 30,982円
(合計) 270,929円(1円の誤差)

【外部リンク】厚生労働省HP「家計調査報告(家計収支編)2019年(pdf)」

この、54,018円の給付増額をシミュレーションします。
計算を簡単にするため、
・年 齢:夫65歳、妻65歳(計算上同い年と想定)
・年金額:夫の年金額は15.2万円、妻は6.8万円(老艇基礎年金満額)
・増加年金に対する税金・保険料:15%とみなす
とします。

・必要追加年金額の計算
54,018 / 0.85 = 63,550 (必要増加年金額)
・必要な繰延期間(夫・妻とも)
年金増加率 = 63,350 / 216,910 = 29.3%
必要繰延期間 = 29.3 % / 0.7 % = 41.8 = 42ヵ月
・繰延期間に必要な生活費
生活資金   = 270,929 x 42ヵ月 = 約1,138万円

●結論
【最短で受給するパターン】
・68.5歳から、約28万円の年金を受給し、収支均衡する。
このときまでに、1,138万円の生活費を支出している。
→65歳時点で、最低でも1,500万円程度の貯えが必要。

※通常は、夫が妻より年上の場合が多いので、受給額と支出額が均衡するのはもっと遅くなる可能性が高い。この場合、年金受給までの必要な生活費は増える。またこのとき、妻の年金を繰り延べる期間は少なくてもよくなる。しかし、一般的に寿命の長い妻がそれで良いのかという別の議論も出てしまう。

※いずれにしろ、ご自分の条件でシミュレーションしてみましょう。

年金の繰り下げ受給は老後の救世主か?

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こう見てくると、年金の繰り下げ受給は「決定的な選択肢の1つ」になると思います。
さきほどの例でみてみると、投資額に対して表面利率6.7%の終身年金であることを考えると、とても割の良い選択だと思います。

ただ、65歳から70歳という、まだまだ元気なときに消極的な節約志向で生活するというのはどうか、という考え方があるのも事実です。体が動かなくなってからたくさん年金を貰っても、そんなにお金を使えないのでは、という人もいます。
こうなると考え方次第ということでしょうか。

●向いている人
・年金はすぐもらわなくてよいと考える人。
・老後にリスク資産は持ちたくないと考える人(まっとうです)
・ある程度の金融資産を持っていて、繰り延べ期間中の生活費を十分捻出できる人。または、その期間中は働いて生活費を稼げる人。
・年金繰り延べ期間中、預貯金が毎月の生活費の額だけ目減りしていくのに耐えられる人。

●向いてない人
・とにかく、早く年金をもらいたい人。
・老後でもある程度のリスク資産は持てると考える人
(長期の投資であればリスクは分散されると言う考えもまっとうです)
・金融資産を投資で運用すれば、年金との合算で十分と考える人。
・年金繰り延べ期間中、預貯金が毎月の生活費の額だけ目減りしていくのに耐えられない人。

まとめ

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さて皆さん、いかがでしたか?
「定年後はこれで決まり?超保守的投資、年金繰り下げという選択」をご紹介しました。完全定年後の生活を考える上での参考になったでしょうか。

はっきり言って、「年金繰り下げという選択」はありだと思います。
はじめに貰わないと損だ!という議論は無視しましょう。死んだ時点で儲かった、損したなんてナンセンスです。

要は、安心してより良い老後生活が送れるか?という一点が重要です。毎日預金通帳とにらめっこして、お迎えが来るまでに貯金が持つかどうか心配するなんて、最悪でしょう。

そんなことなら、少しの間我慢して年金額を増やし、心穏やかに生活できるようにしたほうが良いでしょう。

もちろん、普通に年金をもらって早く楽をしたい、というのもありだし、多少のリスクを取って資産運用で老後資金を稼ぐという方法もありだと思います。要は個々人の考え方次第ではないでしょうか。

最後に、年金に関する書籍をご紹介して終わりにしたいと思います。
(ネットで検索すれば十分だと思いますのでもし欲しければという程度です)
ご参考になれば幸いです。

では、明るく、楽しく、前向きに、毎日をお過ごしください。

(ご参考の本)
【外部リンク】最新 知りたいことがパッとわかる 年金のしくみと手続きがすっきりわかる本

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