・この記事が役に立つ人
・サイドマウント・ダイビング初心者の方で、スキルを上げたいと思っている人
サイドマウント・ダイビングは通常のバックマウントダイビングと違っていろいろな新しい知識が必要となります。
しかし、どこを探しても適当な情報があまりなく、そのほとんどはインストラクターや先輩の助言が頼りです。そこで、自分の備忘録も含めて初心者のためのTips集を記事にしてみました。
もちろんこれで十分だとはこれっぽっちも思っていません。もし必須のものが抜けていたらご教示いただければ幸いです。
サイドマウント・ダイビング初心者のためのTips集
順不同となりますが、Tipsとして以下の12項目を記載します。今後加筆・修正を継続していくつもりです。
中性浮力について
サイドマウントでは中性浮力が非常にシビアです。
もちろん、バックマウントより中性浮力をとりやすいという面はあるものの、ケーブ(洞窟)でのダイビングを想定して上下動無く作業ができることを目指しているためです。ポイントとしては以下でしょうか。
・中性浮力の基本スキルが重要(相当程度のダイビング経験が必要)
・基本的にサイドマウントでは中性浮力はとりやすいが、ビシッと一点に止まる状態が望ましい。
・ブラダー(空気袋)の形状により空気の所在が偏ることがある。そのため常に空気の偏りを治すことを気にしておかないと、体が傾いたりする。
・タンクが2本なので最初と最後で浮力がかなり違う。意識しないと最後の方で体が浮いてしまう(セブは全てアルミタンク)。
・フィンの選択も重要(軽いものがよい)。ジェットフィンなど重いフィンでは足が沈む傾向になる。私はプラスチック製の軽いMares社製のフィンに変えた。
※マニラのときの知り合いはジェットフィンでサイドマウントをやってましたので、ベテランになると大丈夫なんでしょうが。。。
・ブラダー(空気袋)の中には予備の空気袋もある。実際、ブラダーの空気を全部ダンプしても何故か浮き気味でおかしいとと思ったら、予備のブラダーに空気が入っていた。BCDの構造はしっかり把握しておく必要がある(※勉強不足。でも説明書やRAZORのホームページでの説明がみつからない)。
ウェイトについて
・BCDの種類によりウェイトの位置をどこにするか違いがあるようです。私の場合は、ウェイトはハーネスの腰のところに取り付けています。
・私の場合、重さはバックマウントのときと同じ重さを使用(4lbs, 2kg)。今のところどうにか大丈夫ですが、ダイビングの最後ではかなり浮きぎみになります。(インストラクターからは、もう少し重りをつけたほうが良いかも、と言われていますが。。。)
・ダイビングの最初と最後でタンクの浮力がかなり違ってくるので(バックマウントの倍)、少し考えたほうがよいかもしれません。
・気を付けないといけないのは、ウェイトが固定されている、ということ(通常固定されると聞いています。私もそうです)。
つまり、緊急時にウェイトを捨てて緊急浮上はできません。深度が深い場合にもブラダーの浮力が十分あるかを確認する必要があるかもしれません。
空気の抜き方
空気はダンプバルブから抜きます。
インフレーターホースが胸に固定されているため、バックマウントのようにインフレーターで空気を抜くことができません。私のBCDは菱形系の右端にダンプバルブがあるので、体が浮き気味になってきたら体を左側に傾けてダンプバルブが上にくるようして排気します。ちょうどバックマウントのときに右肩を上げるようにしてインフレーター・ホースから排気するのと原理は同じです。
ちょっと問題と言えば、紐を引っ張るだけなので排出空気量の調整が難しいかも、ということです。慣れなんでしょうけど。
手袋を使う
・手袋は必須です。
・サイドマウントでは(特に練習では)ベルトを締めたり調整したり、ボルトスナップを強く握ったりするので、指を傷つけることがあります。
実際私は右親指2か所を切りました。また、左右の指全体が一週間程度腫れて痛くてて困りました。ボルトスナップやバンジーを強く握ったり、引っ張ったりしたからだと思います。
・それにしても素手だとボルトスナップがメチャ滑ります。最初は滑りまくって全然Dリングに掛かりませんでした。手袋があると全然違います。
※ハーネスが新品のため油が出て、それでボルトスナップが滑るとのこと(本当か?)
・薄手のテクニカルダイビング専用ものもが良いようです。売ってなかったので、普通のダイビング用合成皮革製の手袋を使ってます。とりあえず大丈夫です。
ハーネスやバンジーなどの調整
BCDがまだ新しいからかもしれませんが、ダイビング中にハーネスの腰のベルト部分が緩んでしまい、腰で留めているタンクがややはなれ気味になることがあります。ダイビング中でも緩んできたら締め直すことが必要とのことです。タンクが邪魔で、かつ中性浮力をとりながらなの力作業なので、私にとっては結構難儀です。
また、胸のDリングの位置も自分で操作しやすいかを常に考え、位置を多少変更することも考えます。実際私は何回も調整しています(位置の調整は帯がすごく固くて大変)
バンジーのゴムがキツイなどがあれば、別のやや柔らかい素材のバンジーに変更することも考えるようです。実際私のBCDに付属するダンク固定用のバンジーはかなり強力で(外人は力が強いから?)、すごく力を入れても伸びません。YouTubeの外人ダイバーの映像ではひょいと伸びるのを見てビックリしました。結局、少し柔らかいものに変更しました。
自分の体や体力に合わせるのもなかなか大変です。
タンク関連の基本事項
①基本中の基本ですが、使用するタンクを定期的に変更します。
片方のタンクの空気だけを消費すると、タンクが軽くなりトリムのバランスが崩れます。つまり、片側が浮いてしまう、ということです。それを避けるため、使用するタンクを定期的に変更して、いつも同じくらいの空気量がそれぞれ残るように使用していきます。そのため、常に空気圧のチェックをして使用するレギュレーターの選択をしていきます。
②タンクは150Bar程度になったら、後ろのDリングから前のDリングに付け替えます。
腰のDリングは2か所に取り付けられており、最初は後ろのDリングにタンクをつけます。空気が満タンでタンク自体が重いので体の外側にタンクが来るようにします。空気が減るとタンクが浮くので、腰の前のDリングに付け替えることでタンクを体へ引き寄せて浮くのを減らします(まあ、最後はかなり浮き気味にはなりますが)。
練習の場所
各スキルの練習場所は海で2メートルくらいの浅い場所、と言われています。
浅いところだと上下動のごまかしがきかないし、波の影響で当然水の流れなどもあります。
つまり、このような条件が良くない場所でも中性浮力を確保して、安定してスキルのデモンストレーションができなければならない、ということのようです。。。はっきり言って”スパルタ”ですね。
実際、ダイブマスターを雇って5メートルくらいの深さで練習としていたら、ちょっと深くね?と言われてしまいました。外人のYouTube画像では2メートルということはないんですけどね。まあ、練習ですから多少のストレスは必要、ということでしょうか。
バックワード・キックの練習方法
バックワード・キックは慣れないと難しいと思います。
実際、最初私は全くできなかったのでかなり練習しました。YouTubeのビデオなどはとても参考になります。
・YouYubeビデオでテクニックを確認する
YouTubeのビデオを何本も見ました。特にロシア人?の解説が結構良かったです。9つのポイントの解説がありますが、私が役に立つと思ったのは以下の4つ。
・Tip#2:Proper Trim パーフェクトのトリムを保つ(#6と関連)
・Tip#3:Heads Up 頭の位置を下げない
・Tip#5:Locking the Hips 腰を浮かせない
・Tip#6:Relaxed Position 水をかいた後フィンは平行
フィンは下から横斜め上にかいて、上で揃える感じか?
いずれにしろ、足は大きく左右に広げ、上に向かって水を掻く!
多少は後ろに進むようにはなりますが、なかなかYouTubeのようにカッコよくいきません。
【YouTube映像】
・ベッドの上で足のトレーニング
実際にベッドの上で足の運び方などを練習すると効果があるようです。
私もなるたけベッドの上で練習するようにしました。長椅子などがあればその上で練習することも可能です。
・自分のキックをビデオで撮影する
バディに自分のキックを撮影してもらうと、どのような状態なのかがすぐに分かって修正できます。
自分ではお手本のように出来ていると思っても、実際はへっぴり腰だったりするので、ビデオで確認するのは重要です。
エントリー、エギジット
通常のオープンウォーターでのサイドマウント・ダイビングであれば、緊急時対応(バンジー切れ、ボルトスナップが壊れた、など)はそこでダイビングを止めればどうにかなります。また、バックキックなどの特殊なフィン操作もまず使いません。
でも必ず必要なスキルは、エントリーとエギジットのスキルです。
・エントリー・テクニック
エントリー・テクニックには何種類もあるようです(ビデオによれば)。
足のつかない水中でのエントリーが難しいでしょう(これはテクニカル編で解説済)。
いずれにしろ、焦らずやることでしょうか。何回も練習が欠かせません。
ボートから両タンクを装着してバックロールでエントリーするのは、以前知り合いがやってました。
岸から1本だけ装着してジャイアントでエントリーする仕方もYouTubeでやってますね。2本装着してエントリーもありましたが、2本は体力的に厳しいですね。
・エギジット・テクニック
エギジットはエントリーに比べて一般的に難しくなります。
特に波が高い、流れが速い、などの状況であればさらに難しくなります、これはビーチ、ボートいずれにも言えます。
私は技術が向上するまで、コンディションが悪い場合はサイドマウントをやらないことにします。
・バンカーボートからのエントリー、エギジット
スピードボートなど水面から高くないボートなら、上で述べたように2つのタンクを装着してバックロールでエントリーできます。
しかし、通常のバンカーボートになると水面からかなり高いので、自分が海に先に入ってあとからタンクをもらう形になります。
先日、実際にボートエントリーをしましたが、テクニック的にはビーチと同じでそれほど難しくはありません。しかし注意点が2つ。
1.タンクは下に落とせない(浅い所ならまだ良いですが、深場ならタンクを無くします)
2.周囲への注意が必要。タンク装着時に海流で流される場合があるので、ボートとの接触や遠くに流されるなどに気を付ける必要があります。
エギジットの場合も当然海流やうねりに気を付ける必要があります。
ウォッシングマシンみたいなところだと、やらない方が無難かもしれませんね(諦める)。
そのような海況が悪い時は、たぶん水中(流れ緩やか)でセカンダリー・タンクを外して船のラダーまで持っていってボートマンに渡して、プライマリーは付けたまま力ずくでエギジットするしかにように思います。たぶん、はずしている余裕はないと思います。
昔、アニラオでウォッシングマシンに行った時、うねりと流れが凄すぎてエギジットできず、近くの島にエギジットしたダイバーが続出しました(私はどうにかエギジットできたのですが)。サイドマウントの人もダメで島に上陸してました。酷い時は考えたほうがよいでしょうね。
※今後技術が向上すれば記事をアップデートします!!!
練習相手を確保する
最初の段階では練習相手は必要です。
もちろんバディとして一緒に潜るという意味でも必要ですが、ビデオを撮ってもらう、スキルの練習相手になってもらう、という意味で必要です。同じサイドマウントを始めた人であれば丁度良いですが、いなければバックマウントの人を練習相手にすることになります。
ただS-Drillなどはスキルの内容を説明しておかないと、練習になりません。また、エントリー/エギジットでのタンク補助をしてもらう必要もあります。
細かなパーツ類について
サイドマウントではいろいろ細かなパーツが必要になります。日本であれば入手はさほど困難ではないのかもしれませんが、セブではお店も限られますし、お店での専門家も少ないので結構難儀しました、購入に困ったりしたものは以下のものです。
・90度コネクター
セカンドステージを90度曲げるコネクターです。写真を持って行ったのですが、在庫が無く店員が間違えてオーダー。結局お目当てピッタリのものはなく、似たようなものになりました。小さいパーツのにかなり高額でした(泣)。
・バンジー
BCDにデフォルトで付いていたバンジーが固すぎて交換しました。
ただ、丁度良い強度のバンジーが売っておらず、インストラクターがたまたま持っていたものを使わせてもらっています。
(予備のバンジーは固いやつのまま)
・タンクにつけるボルトスナップのひも
これも微妙なものですが、それなりの太さが必要です。結び玉を作って、これをステンレスリングにはめる必要があります。
大したものではないのですが、ちょうど良い太さの紐が売ってないです。
・SMB
普通は皆さん持っていると思います。
ただ、今回の講習では、口で空気を入れて水中から打ち上げ、水中で回収することが必要です。
そのため小型のSMBが持ち運びも含めて良いのですが、私の持っているのは大型のもので、回収に難儀しました。これも丁度良いサイズがなくそのまま大きいのを使っています。
・ボルトスナップ
ボルトスナップの引っ掛け側のスライドがスムーズかどうかは重要です。安物だとスライドが固くて難儀します。
一般に、ScubaProのものがスムーズだと言われています。自分で確かめるしかありませんね。
・セカンドステージ用の中圧ホース
デフォルトの中圧ホースでは長さが合わないので交換する必要があります。
問題はその固さ。プライマリーは90度のコネクターを付けるのでまだ良いのですが、セカンダリーはコネクターがありません。そのため、ホースに引っ張られてマウスピースが歯茎に当たり痛くなりました。
講師にその旨言ったら、「セブのホースは固いから仕方ないヨ」とのこと(泣)。
セカンダリーにもコネクターを付けることは可能ですが、P/Sの判断が難しくなるので、当面は痛いのを我慢します。
工具類
サイドマウントではいくつかの工具類が必須になります。BCD組み立てに必要な取り付けねじは専用の工具がついていましたので、それを使えばOKでした。
・マイナスドライバー、または専用工具
ステンレス・リングを締める/外すために使います。筒状になった専用の工具があればもっと良いです。
・レンチ
レギュレーターのホース交換のために必要
・強力なハサミ、カッター
BCDのハーネス帯を切断するので、強力な物が必要(シートベルト・カッターを使う人もいる)
・小さいハサミ(結束帯などを切り落とす)
ホース接続を留めるために結束帯をたくさん使います。その余った部分を綺麗に切り取るためのハサミ。バンジー切断にも使います。
・結束帯
ホース接続を留めるためなどに使います。安物でなくできれば専用の結束帯があればベストです。
切り落とした部分はライターで熱して、鋭利な部分がなくなるよう押し付けて平らにします。
・ライター
結束帯の切り口や、バンジーの切り口を熱して丸められるようにします。
Awareness(自分の状態や周囲への注意)
基本スキル10種類がだいたいできるようになってから、特にインストラクターから注意を受けたのは「Awareness」です。
サイドマウント・ダイビングでは、この「Awareness」が一番大事だということです。(Caveを念頭に置いているようですが)
「Awareness」が具体的にどのようなことかというと、だいたい以下のようなことでした(英語と日本語ちゃんぽんなので。。。)
・2本のタンクの空気の残り具合(一度見たら、残圧を覚えておいて、何分で交換するかを考えておく)
・タンクを含めた体のバランス状態
→タンクの空気減少だけでなく、ブラダーのズレ、ブラダー内空気の片寄り、腰のハーネスの緩み、などなどでバランスが崩れる場合がある。非常に微妙です。また、バンジーの長さ、ブラダーのフィット状況、ハーネスの長さ、Dリングの位置などが自分にフィットするよう、常に調整を続けていきます。これが結構大変。。。
・自分の上下左右の位置(CaveのやWreckの場合は特に重要)と周囲や他のメンバーへの注意
・海流があるときの流されている方向の認識、および泳ぐ方向など
・とにかく、いつもと違うというこに気づける感覚(動物の勘か?)
まとめ
さて皆さん、いかがでしたか?
「サイドマウント・ダイビング初心者のためのTips集」をご紹介しました。サイドマウント初心者の方が、これからサイドマウント・スキルを習得していく上での参考になったでしょうか。
実際、私の講習の場合はテキストもなく、スキル・リストは自分でリスト化して、これでよいかを確認しました。
また、日本語での日本語でのサイドマウント・スキルの記事など一切なく、英語でもまとまったものが見当たりませんでした。まあ、それだけ需要そのものがないのでしょうが。。。
案外わかりやすいのはYouTubeですが、バンジー切断やボルトスナップ破損、インフレーター・ボタン破損、S-Drillの2人揃っての泳ぎ方などの映像は見当たりませんでした。
こういう状況なので、私自身ほんとの初心者ですがスキル解説やTips集を纏めようと思った次第です(自分の備忘録という意味も含めて)。合わせて、へたっぴぃですが、スキル・デモンストレーションの映像もYouTubeにアップしたいと考えています(本当は誰かがやってくれれば良いのですが)。
もし、間違い等あればご指摘いただけたらありがたい限りです。
これからサイドマウントを習得しようとされる方々の少しでもお役に立てれば幸いです。
では、明るく、楽しく、前向きに、毎日をお過ごしください。
(ご参考)
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